266もの業者が電気小売に参入 理由はFIT制度というものにあるらしい
電気自由化に入る前の3月25日、経済産業省は266社の小売電気事業者が申請したことを発表しました。
一部の予想を超える非常に多くの業者が電気を売りたいと乗り出してきたわけです。電力市場は8兆円ともいわれる市場ではありますが、もともと薄利多売と言われていた電力市場。なぜこれほど多くの業者が参加したいと思ったのでしょうか?それにはFIT制度という新規参入業者が損しにくい制度があるからです。
FIT制度とは
FIT制度とは(Feed-in Tariffの略)太陽光とか風力とか自然に優しいエネルギー資源を使って発電した電力は高く買い取りましょうという制度です。なんで太陽光発電などでできた電力は高く買い取ってくれるのでしょうか?
政府は新しい事業を始めるには採算が合うようになるまでには時間が掛かるということを知っています。国はクリーンな電力の開発を進めたいのですが、太陽光発電も現時点では採算が良くありません。そこで技術が進み採算が合うようになるまでは、赤字にならないように高く買い取ってあげようというわけです。
では買い取るための資金はどこから調達されるのでしょうか?国が税金から支払うのではありません。すべての電気利用者から少しずつ徴収することによって調達される予定です。つまり少々電気代は高くなるけど国も電力会社も損失を受けることなく自然エネルギーを促進することができるという制度なのです。
国のお金ももとはと言えば国民の税金ですから結局同じこと、環境のために電気代が高くなるのは致し方ないでしょう。積極的な面に目を向けましょう。このFIT制度によって自然に優しいエネルギーはいよいよ増えていくはずです。日本は将来的に放射性廃棄物を出す原子力やCO2を出す火力発電にあまり頼らなくても電力を用意できるようになるかもしれません。
FIT制度の小売業者への影響
現在FIT制度のおかげでたくさんの会社が電気小売を始めたいと思うようになりました。会社としてメガソーラーを建設している会社も幾つかあります。例えばソフトバンクは子会社のSBエナジーを設立し、次々と太陽光発電設備を設置しています。
自由化が始まる前の2016年3月時点において国内では25基(260.2MW分)もの設備が稼働しています。なぜこれほどの投資をしたのでしょうか?会社として地球環境を考えてもあるでしょうが、むしろFIT制度があるので、どれだけ投資しても必ず黒字化できる目算があるからだと言われています。
2013年4月までなどは1kwにつき42円もの高額で買い取ってもらえたのでかなりの利益となっていました。現在買い取り価格は徐々に下がっていき1kwあたり29円まで落ちましたが、それでも赤字になるほどの買取価格ではありません。太陽光設備の技術が向上するにつれていよいよ採算が良くなり、新規電気小売業者は増えるかもしれません。
FIT制度の成功例と失敗例
FIT制度が成功するかどうかは国が買い取り価格をいくらにするかに掛かっているようです。FIT制度の先進国であるヨーロッパの実例を見て見ましょう。失敗例としてはスペインがあります。スペインでは2007年にかなりの高額で長年にわたり太陽光発電の電力を買い取ると表明したので2008年には一気に太陽光発電設備が増えて、スペイン全体で2700MW分もの太陽光発電設備の投資がありました。
あまりにも爆発的に太陽光発電設備が増えたために国はあわてて買い取り価格を下げました。それでも約束してた発電分は買い取らなくてはならず、2兆円を超える赤字を抱えることになったのです。買い取り価格は下がったので設備投資もパッタリと止まってしまい、スペインのグリーンエネルギー発展は止まりました。
一方、成功例はドイツです。ドイツは2005年に1kwにつき70円という驚異の高額買取を発表しました。徐々に値下げを行ない、程よい設備増資を促してきました。現在世界中の太陽光発電の3分の1はドイツにあるほど設備投資に成功しています。
FIT制度の展望と私たちへの影響
FIT制度はグリーンエネルギー促進制度として世界中で機能が証明されている方法です。日本も大いに採用していくでしょう。ですが当然FIT制度の負担分は私たちの電気代にかかることになっていますから、環境が守られる分、私たちの生活は苦しくなることを覚悟しておかなければなりません。
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