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日本にはない、米国の電力市場の形態のひとつ「アンシラリーサービス市場」とは?

   

電力自由化においては日本はまだまだ未知数の世界です。

ですので、他国の自由化された市場を前例として勉強するのは大切なことです。
例えば、日本よりも25年も早くに自由化が始まった米国ではどうでしょうか。

日本との電力市場の自由化で違うポイントはいくつもあります。
広大な国土なので、日本のようにひとつにまとめることが難しいということもありますが、合理的な考え方をする米国なので、興味深いことがいくつもあります。

その中で、今回はアンシラリーサービス市場を見てみましょう。日本では現在のところアンシラリーサービス市場は存在していません。

まったくないわけではなく、日本では一般電気事業者がアンシラリーサービスを提供しており、それにかかるコストは電気料金や託送料金として消費者から回収されています。
そもそもアンシラリーサービスとはなんでしょうか。

電力市場におけるアンシラリーサービスは電力の品質――つまり周波数や電圧になりますが、これを維持するための運用サービスのことになります。

アンシラリーサービスが杜撰だと周波数や電圧が変動してしまい、例えば照明が点滅してしまったり、電気機械で製品を製造する工場では品質が安定しないなどの問題が出てくることでしょう。
極端なケースでは大都市全体が大停電を起こします。

電力事業にとっては発電と同時に重要なサービスなのです。

これまでは電力発送電システムとアンシラリーサービスの機能は分けることができないと考えられていました。

日本であれば東京電力などの大手電力会社がアンシラリーサービスを含めたすべてのサービスを独占的に担っていくことが当たり前だったからです。

しかし、海外で電力小売り自由化が進み、発送電分離が実施されるとアンシラリーサービス機能は細かく分類していくべきであるとされ、アンシラリーサービス市場ができあがったのです。

では、アンシラリーサービス市場はどのように分類されたのか、次の項で見てみましょう。

 

米国のアンシラリーサービス市場の分類

米国のアンシラリーサービスはISO(独立系統運用機関)などが行っています。

米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)ではアンシラリーサービスを次のように分類しています。
 

 
周波数制御 : 系統周波数を定められた範囲で維持し、需給を一致させるサービス

電力インバランス : 計画した数値と実際の数値の送電量の差を補償するサービス

瞬動予備力 : 発電でトラブルが発生した際に即電力を補給するサービス

運転予備力 : 発電でトラブルが発生した際に短時間内に電力を補給するサービス
 

 
これらは市場取引が可能なサービスで、ほかにはISOなどが提供するサービスとして託送料などで費用を回収するアンシラリーサービスもあります。
例えば担当地域の発電計画を立てて、それに沿って供給を行ったり、電圧を安定させるために電力を必要分供給したり制御します。

すべての電力事業関係者が分類された各種アンシラリーサービスに参入できるものではありません。
例えば発電所がISOからの指令に対して自動的に出力増減できる機能がないと周波数制御の市場に入ることはできませんし、瞬動予備力の市場に参入可能なのは短時間で出力を増減できる発電事業者などになります。

ただ、瞬動予備力に対応できればいいわけですので、米国ではバッテリーをアンシラリー市場に参入させる動きもあるなど、日本ではありえないほどに自由になっていることが伺えます。

日本の市場はアンシラリーサービス市場がまだないわけですが、これは今回の自由化で参入してきた電気事業者にとっても、米国のような発電設備に付加価値をつける意味がないということになります。
瞬時に主力を増減させるには特別な機能を設備につけなければならないわけですが、それはノーマルの発電設備よりもずっと高価な設備になるわけです。

自由化で競争が始まった以上、設備投資に還元できるように電気料金を高くはできないので、電力事業者としては参入の意志もないですし、そんな環境でアンシラリーサービスは根付きません。

しかし、米国のように日本も将来的には発送電分離を行うのですから、いずれアンシラリーサービス市場は登場します。
それであれば、いずれは検討することになるのですから、早くから取り組むべき課題やビジネスチャンスについて検討しておくべきなのではないでしょうか。

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