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自由化の課題解消に検討するべき容量市場を米国から学ぶ

   

電力自由化でたくさんの新電力会社が日本にも誕生したわけですが、今後、需要が大きく拡大したときに必要に応じた発電能力が日本の市場にあるのかが課題になります。

当然、今回の自由化においては市場は新電力会社に必要なだけの電力を確保することを要求します。
それに対して新電力会社はどう対応するのでしょうか。

それには容量市場が検討されることになるでしょう。
自由化が進んでいる諸外国でも検討は進んでいますし、日本の経済産業省の「電力システム改革の基本方針」でも課題のひとつになっています。

ここで学ぶべきは、すでに10年以上も容量市場を運営してきている、米国のISO(独立系統運用機関)である「PJM」(Pennsylvania-New Jersey-Maryland)です。

まず、容量市場というのは、発電事業者の将来発電できる能力、つまりその発電容量を取引する市場であるということです。
電力小売事業者は需要に応じた発電量を確保しなければなりません。

仮に発送電分離が完全実施されていれば、小売事業者は容量確保のために発電事業者と契約をしなければなりませんが、相対取引で足りない場合、容量市場から調達することになります。

つまり、容量市場は将来の発電能力に価格をつけて取引するものです。
この将来の需要が目安となって発電設備への投資が期待できるものでもあります。
ただ、気をつけたいのは、容量市場が安定供給を確保することはまだ実証されていません。それはPJMの価格変動からもわかるように、課題は残されているのです。

 

PJMで見る、米国の容量市場

未来の安定供給がまだ仮説に過ぎない容量市場ですが、それは米国で容量市場運営で実績のあるPJMの容量価格からもわかります。

PJMでは3年先の容量を取引する際の容量価格の推移を発表していますが、価格変動がかなり大きいものになっています。
例えば40ドル台だった価格が3年後に180ドル、さらにその2年後には20ドル、その3年後に再び140ドル台にまで高騰しています。

変動幅が広すぎて、一般的な発電事業者では設備投資に踏み切っていいのかどうかの判断は困難です。

PJMでは管轄内のメリーランド州とニュージャージー州の州政府が競争入札を通して長期間価格を保証し、電源建設を支援することになりました。

しかし、その場合は逆に容量市場の価格が必要以上に安くなる可能性も出てきます。
公的な関与は最終手段であっても、最小限にしなければ市場にバランスが崩れてしまうと考えられています。

日本が容量市場を導入する場合、課題はまだまだ多いです。
将来の発電能力とひとくちで言っても、その将来はどの時点なのか、また、実際にその時点になったときに予定していた発電能力がなかった場合のペナルティはどうなるのかなど、事前に明確にしておくべきこともたくさんあるのです。

容量市場は未来の需要に対して取引を行うので制度設計が複雑になるのは間違いありません。設計を誤ればコストが大きくなるというリスクもあるでしょう。

また、発電能力に価格を支払うということは要するに将来の発電設備への投資でもあるわけですが、減価償却の済んだ設備にも容量価格を支払うことになる場合もあり、反発する小売事業者も出てくる可能性も残っています。

すでに容量市場を運営している米国でさえ容量市場の制度設計に試行錯誤が今も続いています。
日本でも安定供給のために容量市場を導入するのであれば他国の経験をよく分析し、効果や課題を検証しながら取り組まなくてはならないでしょう。

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