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日本も米国の北米信頼度協議会のような組織が必要になる?

   

2016年4月についに日本でも始まった電力自由化は多くの課題を残しています。

ご存知のように、これまでの日本は大手電力会社10社が発電から発送電、供給の品質確保など、すべてのことを担ってきていました。

今後、自由化が進み、さらには発送電の分離で完全に自由化が欧米のような状態になると様々な問題が生じてくることでしょう。

例えば、自由化の進展で系統運用が難しくなって、信頼度の維持までもが困難になる可能性があります。それはまず組織間の調整問題があります。

新電力会社が数百社にもなり、その上発送電も分離されるとアンシラリーサービスなどの各種サービス会社も登場します。

そうなると、すべての企業との調整などが必要になるわけですが、これまでの大手電力会社ではまったく不要だった対応です。

さらに、電力取引がこれまでの電力会社の限定地域を越え、広域化することで管理する地域や各事業者間の協調、情報交換なども重要になります。

発電でも送電でも競争原理が働くと利益追求のために過剰設備を削減し、効率性を追及するようになります。

一般的な製品ならまだいいですが、電力だと長期的視点で設備形成が行われにくくなり、急激に需要が上がったときのための電力の予備率が低下してしまいます。

こういった懸念があるので、信頼度維持に関する組織が必要になってきます。
日本よりも早くに自由化が実施され、発送電の分離も進んでいる米国には北米信頼度協議会があります。

日本の自由化では今後こういった組織をどう活躍させるか、参考にするべきでしょう。

 

北米信頼度協議会はどんな組織なのか

米国は日本よりもずっと早くに電力自由化に踏み切っていますし、広大な国土での自由化は様々な困難を生じさせました。

広域で発送電をするため、需要の予測がかなり難しくなったことや、電力事業者間の競争でそれこど信頼度の維持もまた困難になっています。

しかも、米国の電力自由化は必ずしも成功例ばかりではありません。
実は失敗もしており、大停電を起こしたこともあります。

そんな中で1968年に設立された北米信頼度協議会が、電力自由化でまたその機能を役立てるようになっているのです。北米信頼度協議会はNERC(National ElectricReliability Council)という略称を持ち、信頼度維持に向けた取り組みを行っています。

そもそも北米信頼度協議会は米国内で発生した大きな停電事故を教訓に信頼度維持の枠組みを整え、強化してきました。
その停電というのは1965年11月9日に起こったニューヨークを中心にした米国北東部の大停電です。

復旧までに13時間も要したことから、これを教訓にして電力業界が1968年に信頼度機関としての北米信頼度協議会を設立したとうわけです。

当初の北米信頼度協議会のガイドラインも日本のような垂直統合された電力事業者を前提にしていました。

しかし1990年代からの電力産業改革によって北米信頼度協議会の運営方針が実際の運用に見合わなくなっています。

それは、電力事業自体の機能変化やISO、RTOの出現で標準としていた系統運用機関がなくなってきたということにほかなりませんでした。
そのため、北米信頼度協議会は機能別に事業者を認証していく仕組みを作り上げました。誰(どの電力会社)がなにをするのかではなく、この機能を誰(どの事業者)が担うのかといったふうに見ていくようになったのです。

そして、2005年のエネルギー政策法で信頼度基準に法的拘束力を付与することが定められ、実効性も担保されました。

日本は自由化が始まったのですが、供給信頼度の維持は一般電気事業者が担っています。これまでは高い供給信頼度がありましたから、自由化が始まった直後である現在はまだ大きな問題は発生していません。

しかし、これからは電力市場の構造のありかた次第で信頼度維持の枠組みを見直さなければならないかもしれません。

そうなることはつまり市場の信頼度が低下している事態ですから、ちょっと心配ではあります。
ただ、日本はこれまでも供給システムなどが優秀なので停電などのトラブルはほとんどなく、信頼度が高いです。
自由化で心配なのは、別々の企業同士がどう協調していくかということです。

ですので、北米信頼度協議会はいずれには必要になるのかもしれません。

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